シリコンバレーに来てから、自ら起業したり、日々頑張っている方々にお目に掛かるたび、「成功する人のマインドセット」というものはやはり存在する、と思わずにはいられません。
松下幸之助は、政治家に必要なのは「運と愛嬌」である、と言ったそうです。
これは、私財を投じて作った松下政経塾の塾生選抜の基準として語られたもののようですが、同じことが、政治家のみならずビジネスパーソンでも言えるのではないか、と最近思うようになりました。
私が直接見聞きしてきた起業家や、「成功しているキャリア(傍から尊敬を持って見られるようなポジションで、本人も楽しんで仕事している)」の方の範囲内での分析なので、アカデミックでもなければ定量的でも全くありませんが、幾つか印象的だったことを書いておきます。
- 出発点から意識的・戦略的に今日のキャリアを築いてきた人はあまりいない
直接自分から質問できるチャンスがあると私が必ず聞いてしまう質問がこれ。
「就職した時から、今のような仕事をしようと思っていたのですか?大学時代の専門と今のお仕事とは直接的に関係がありますか?」「今のお仕事で達成したい目標、あるいは3年後こういうふうでありたい、というイメージはありますか?」
殆どの人の答えは、「本当はこういうことをやってみたいと思ってその会社に入ったが、配属先は全然違うことをやっている部門だった。でも、やっているうちにだんだん面白くなって、気が付いたら今の会社を興していた」
キャリアの8割は偶然で決まる (*) 、という話を 高橋俊介「キャリア・ショック」で読んだことがあります。
* 計画された偶然理論 (Planned Happenstance Theory): 変化の激しい時代には、キャリアは基本的に予期しない偶然の出来事によってその8割が形成されるので、個人が自律的にキャリアを切り拓くためには偶然を必然化する、自分にとって好ましい変化を起こすプロセスが必要である、という理論
たまたま、人事部や上司が、その人も気づいていない潜在的なポテンシャルを読み切って適切な配属をあてたのか、あるいは、その人の「その時自分の与えられたミッションを精一杯遂行し、高いスキルを身に付けて行く」貪欲さ・前向きさ、といったマインドセットが幸運の女神を微笑ませたのか、それは私には分かりません。
ただ、「その人の潜在的な向き・不向きに配属が合っていた」というのは、結果を見たからこそ言える話であって、それを「運が良かった」と思うかどうかは、本人次第のようにも思います。であれば、「自分は運が良い」と思っている人こそ強運の持ち主 といえるかもしれません。
ちなみに、私が上述の質問をする理由は、自分自身、まだ意識的・戦略的に「この専門分野で」と腰が座っていないからだったりします。私はどちらかと言うと、自ら主体的に「こういう仕事がやりたい」と言ってその分野のスキルを構築して行って仕事を勝ち取っていく、というよりは、その時々のアサインメントの中で自分なりの課題を見つけて取組み、そこで身に付けたことが次のアサインメントの呼び水になっているタイプ(少なくともこれまでは)です。
- 言語能力が高い
シリコンバレーという土地柄なので、私の周りにいるのは圧倒的に理系出身の人が多いのですが、一流の人ほど言語能力も高い と感じることが多いです。
もう少し具体的に言うと、「相手の発言の内容、背景、意図を短時間で的確に理解し」「自分の意図を適切に相手に理解させる」力、というのでしょうか。
専門分野の違う人に自分の仕事の内容を伝えるために、数字や身近な例を出して説明したり、年代の違う人と話しをしていても、相手の質問・発言の文脈を外さないので、会話のピントが狂わないのですが、これは、実はものすごく難易度の高いことだと思います。自分が言いたいことを明確に理解しているのは当然の前提として、相手が何をどこまで理解しているか、相手の知識に対する洞察が必要なので。
この能力は、外国人に囲まれて仕事をしているため、背景の異なる相手とのコミュニケーションを円滑にするために必要に迫られて身に付いたものなのか、元々言語能力が高いから外国での仕事がうまく行くのか、どちらかは分かりませんし、両方かもしれません。
ただ、エンジニアであっても、専門分野の知識・能力だけではなく、コミュニケーションスキルが重要であるというのは興味深い発見でした。
- 愛嬌がある
決して軽んじられているわけではなく、その能力や人柄に対する敬意は払われてはいても、どことなくお茶目で、気軽に話し掛けたくなる雰囲気、あるいは、他人を緊張させない雰囲気がある方が多いと感じます。
シリコンバレーに来て驚いたことの一つは、トップエグゼクティブであっても、若い人に気軽に接していることでした。勿論、ビジネスの場面になると、にこやかに笑顔で握手を交わしていても、その瞳の奥底では相手を真剣に値踏みしているのはよくあることですが、なにせシリコンバレーは全体が一つの会社みたいなもの。「昨日の敵は今日の友」いつ誰にお世話になるか分からないので、処世術としてそう振舞っているのか、あるいはIT業界のメジャーリーガー同士の同胞意識・チームメイト感覚もあるかもしれません。
(ちなみにこれは土地柄も非常に大きく、アメリカ全土がそういう雰囲気というわけでは決してありません…)
いずれにせよ、(私自身は日本企業の駐在なので経験ありませんが、友人知人の話を聞く限り)性格的にも円満である、というのは、就職・転職の際にもじわじわと効いてくるファクターのようです。
仕事の上で直接何人もの人と接したわけでないので、あんまり専門知識・スキルとは関係ない話になりましたが、大久保幸夫「仕事のための12の基礎力」 にも、愛嬌は仕事の基礎力だ、と書いてありました。この本は「マーケとかアカウンティングとか色々勉強しているのに、何だか最近仕事がうまくいかなくて…」という人にオススメです。「いつ・どうすればそれらが身に付くのか」割と具体的に、しかもすぐ取組めそうなことが書いてあるので、たまに自分の仕事力の棚卸しをするのに良い本だと思います。
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