良いアイスホッケー選手は「今パックがある場所」ではなく「パックがこれから向かう場所」に動くそうである。
私はブログを始めて2年半になるが、最初は何を見ても何を読んでも目新しく、全てが新鮮な感動だった。「面白い」と思うものをスクラップして行けば次第に自分の方向性が見えてくるのではないか、というぐらいの漠然とした気持ちで始めたので、最初はそれで良かった。
次に感じたのは、今起こっていることをしっかり見つめていれば「次の瞬間」に何が起こるかは、なんとなく分かるようになるということだった。「あ~やっぱりそうなんだ」と予想できることが出てくる。
例えば、デジカメ業界の製品開発のスピードから「日本の製造業は今後大丈夫か?」とブログに書いた直後にSONYのCEOが交替した。PC業界におけるアウトソーシングが、製造工程だけでなく設計でも行なわれつつあり、バリューチェーンの上流までコモディティ化が進んできていることをBusinessWeekの特集より早く私は自分のブログに書いた。また、同時に「hpはこれからどうするんだ?」と書いたら、やはり直後にhpのCEOが交替した。
そういう先取りができるようになったのはそれなりに嬉しかったが、同時に、自分の実力は、アイスホッケーで言えば、0.01秒後にパックがどこにあるかが分かるぐらいのレベルだな、と冷静に考えてもいた。確かにパックが動いたのを見てから動くよりは良いかもしれないが、パックに振り回されているだけで、ゲームをコントロールできているわけではない。では、「パックが向かう場所」を察知する能力を高めたり、ゲームの流れをコントロールできるようになるには、どうすればよいのだろう?
私が考えたのは、スポーツで言えば、自分のプレイや試合のビデオをたくさん見て、各チーム・プレイヤーの得意技や癖、現在どれぐらいの力があるのか知ること、そし
てどういう状況下ではどういう作戦がうまく行くことが多いか、自分はうまく行くのか反省したり、学ぶことだった。そこで、いったんニュース記事・雑誌を読む量を減らし、(ものすごいスローペースでは
あったが、)コンピューター業界の歴史・大きな流れ・マネジメント史を取り上げている本や、メジャー企業のアニュアルレポートを読んだ。業界を取り巻く大きな流れを感じるためだ。2005年の夏頃の
ことだ。当初は何をどういう順番で読めばいいのかサッパリ分からなかったので、人が良いと言うものは手当たり次第に読み漁ったため効率は悪かったと思う。
いきなり難しいものにぶつかってしまい、消化不良のまま次に行き、時間が経ってから「そうか、そういうことか」と腑に落ちることも非常に多かった。最新の
情報から自分を切り離すことに対する恐怖は確かにあったし、(自分で言うのも何だが)この時期の私のブログは、試行錯誤がモロに文章に出ている。ただ、小
難しい本を読み漁ったのは自分にとっては良かったと思う。
それから、当たり前と言えば当たり前だが、本業で日頃やっていることが自分の血肉になっているのだな、と改めて感じたのも乱読期の後だった。勤務先
や顧客に操を立てる意味で、ブログには普段自分が本業でやっていることは基本的に書かないことにしているが、それでも、自分が日々思っている本音がポロっ
と出ることもあって、そういうエントリは人気があったようだ(はてなブックマーク数・PVから言うと)。腹から出た言葉の強さだろうか。バックボー
ンが日本のSIerであり業務SEであることが私の個性だと、今は思える。一時は迷い・色気が出て、更新頻度も落ちたし、全然違う世界のことを書いたりも
したが、やっぱりそういうのは浮気であって自分の本命はITだと実感できたので、あれはあれで良かったと思う(あ、でも、たまに違う脳みそを使うのは楽し
いので、これからもたまには浮気もします 笑)
今後の計画・目標で書いたように、株価というものについて考えてみようと思っていた中、モルガン銀行でカリスマトレーダーとしてその名を馳せた「藤巻健史の5年後にお金持ちになる資産運用入門」を読んだ。
この本は、お金持ちになれる人のマインドセット・心がけについて書いてある。「この株を買え」とかチャートの読み方等のTacticalなことは書かれていない。藤巻さんによると、どの状況下ではどの金融商品が有利なのか、そもそも今はインフレなのかデフレなのか、インフレやデフレの原因となるのは何なのか、為替から見た日本の相対的なポジショニングはどうか、市場を動かすメカニズムを押さえた上で、株を買うべき時なのか、不動産なのかを、20年単位ぐらいのスパンで考えることが大事なのだそうだ。つまりA社の株を買うのかB社の株を買うのかは、その後考えるべき小さなことだ、と。本全体としても、品川女子学院での講義の様子を収録したという構成もあって、平易な話し言葉で分かりやすかった。
これは、個人の資産運用でも勿論大事なことだと思うのだが、私にとっては、業界・市場を捉える視点として、ものすごく印象的なポイントだった。なので、今後の計画・目標は淡々とやりつつ、藤巻さんが言うように下記について少し勉強してみようと思う。
- 複式簿記
- 為替
- 不動産
自分の目指しているところは、どのようなものか。
世界の第一線で活躍するスポーツ選手を引合いに出すのはおこがましいけれど、(まだ私は全然そんなレベルに達してないから)あえて「イメージ」を自分に言い聞かせるために、例として取り上げたい。スピードスケートの清水宏保選手は、世界新記録が狙えるリンクでの大会で転倒し足を痛めた際に、こう言ったそうだ。
転倒は、氷を捉えすぎたために起きたのです。
限界のスピードが出ているところでは、
ミスをする確率も高くシビアになる。
悪い転び方ではない。それどころかいい方向の転び方だ。
世界記録はいつでも出せる。そのプロセスが大事だ。
今の自分がどのエリアに入っているのかを知りたかった
また、同じ記事の中で、イチローは、99年4月11日の西武戦でセカンドゴロでアウトになった際、イメージ通りにバットを振っても生じる微妙な体のズレを瞬間的に調整する体の使い方が分かるようになり、飛び上がりたくなるほどの喜びを感じたというエピソードが紹介されている。2人に共通しているのは、その時々の目先の結果に一喜一憂するのではなく、自分だけにしか分からない「ある感覚」を求め続けているということだ。
三振した時、二流のバッターはふてくされるが、一流のバッターは平然としている(中谷彰宏「生き直すための50の小さな習慣」より)のは、おそらく一流の人は結果だけでなくプロセスを重視しているからだろう。藤巻さんも、「大きな勝負で損をすることより、予想が当たっていた時に勝負しないことのほうが悔しい」のだそうだ。
こうした人達が「極限で見る風景」というのは、どのようなものなんだろう。
自分がこれからどこで勝負するかは、見えているか?
自分のコンディションを、正確に把握できているか?
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