死んでしまったら私のことなんか誰も話さない

Innovation, High Technology, Globalization


医薬品業界におけるイノベーションのパラドックス

イノベーションが企業の売上高に与える重要性が増している反面、企業側の認識は低く、イノベーションに対する取組みは不足している、というDeloitte Consulting の分析を裏づけそうなデータが一つあったのでアップロードしておきます。
※ Deloitte Consulting の調査について紹介した私のエントリ:「イノベーションのパラドックス」
http://shimizu.typepad.com/vietmenlover/2004/02/post_5.html
また、そのエントリに、丁寧な解説を付けてくださったEdiTechさんのエントリ:「イノベーションのパラドックス」を読む
http://editech.air-nifty.com/contents/2004/02/post_5.html

出典はWall Street Journal (スキャナ取り込み画像なので荒いですがご容赦を)で、医薬品業界でのR&D費用の上昇と、FDAに認可される商品数の推移を比べたものです。

医薬品開発の手法も、かつての人間の勘と経験によるものから、コンピュータを使って化学品の組み合わせを総なめでシミュレートするようになってきているとのことですが、ITを使うようになったがゆえに逆に画期的なイノベーションに繋がりにくくなっているのではないか、という考察が興味深かったです。

また、折角苦労して生み出した商品も、競合他社が似たようなものを安く投入することができ、かつ、類似品が出回るまでの時間が短くなっている、つまり、新商品が競争優位を維持できる時間が短くなっていることが、手間暇が掛かるリスキーな研究への投資を惜しませている要因だとも記事には書かれていました。

#以下は、うろ覚え・裏とってない情報なので間違ってたら申し訳ないのですが(後日、確認します)

確か薬というのは、FDAに認可を受けたら処方を登録しなければいけなくて、特許で保護されている間は、他社が同じものを作ろうとしたらライセンス料を取ることが出来るけど、特許が切れるとフリーで真似が出来るようになる、という業界ルール(規制)だった気がするので、イノベーションの起こりやすさを左右する要因として、規制の影響は大きいのかもしれません。



5 responses to “医薬品業界におけるイノベーションのパラドックス”

  1. こんにちは。トラックバック頂いたので早速読みました。
    WSJ はいいですね。日本の大手経済新聞だと、ここまでの「見立て」を提示してくれません。
    感想としては、IT を使おうが使うまいが画期的なイノベーションというのはそうそう生まれるものではないと思いました。それより気になったのは、「なぜ新薬の認可数が減ってきているのか」です。競合他社が後追いで新薬を出すリスクなども重要ですが、とにかく認可されなければしょうがありません。そうとう昔の記事ですが、参考になりそうな URL を挙げておきます。
    http://www.med.kyushu-u.ac.jp/FAIDS/atnj/atn245j/atn245j08.html
    そういえば、WSJ のグラフの開始年は 96 年でしたね。その頃から医薬品に関する法規制が厳しくなったということはないでしょうか。AIDS とかいろいろな理由で(それが、FDA の新薬認可数に如実に表れている?)。
    こういう市場全体に関する分析では、法制度・規制が企業活動に与える影響もかなり大きいのではと想像しています。そういう研究が行われていても地味な分野(?)なのであまり目にすることはないのは少々残念に思っています。
    感想は以上です。これからも、ホッとする文章を楽しみにしてます。
    それでは

  2. 追記:もし許認可制度が厳しくなったことが新薬認可数の減少の主たる原因、あるいは無視できないほどの影響を与えているとしたら、WSJ の分析はかなり違ったものになるはずだと思いました。
    ちょっと判断材料が少なすぎて推測の域を超えませんが。

  3. EdiTechさん、コメント並びに興味深いデータのご紹介、ありがとうございます。
    WSJはイイ!!です。わたし的には一番お気に入りの情報源だったりします。
    医薬品業界、は、アメリカではかなり大規模な産業なので、きっと英語文献を漁れば何か出てきそうな気もします。
    「イノベーションに規制が与える影響」というのは面白そうなテーマなので、気長に追ってみようかと思います。
    何か見つかったらポストします。
    あと「ホッとする」というお言葉は嬉しいですー。
    またボチボチ遊びにいらしてください。

  4. 伸びるスレッド(すれっど?)を見ていて気になってきたので、コメントします。トラックバックでもいいのですが、自分のところでは扱いにくいテーマなので。
    手元の資料(「経済学で現代社会を読む」)からざらっと抜くと1962改正法成立にて
    ・FDAの審査期間制限を取り払うと
    ・安全性の有効性証明が厳格化される
    →狙いは個別薬の安全性の担保。しかし、市場に出る新薬数は減る。新薬認可期間は平均7ヶ月から70年代後半の8~10年にまで漸増。
    という事例があります。典型的な規制強化の事例で、おそらく安全性担保を狙ってのものですが、反対側で新薬が市場に出ないことで薬の恩恵を受けられないユーザーを生んでしまうという失敗を犯しています。この後、特許失効後の一般薬については認可期間を短縮することで規制緩和を図ってバランスを取り戻そうとしています。
    イノベーション論の見地では、コストが上がるという意味では製薬の審査規制強化はネガティブに働きやすいです。(他の産業ではどうだったかなぁ・・・)
    ※Blogでもちらと書いたのですけど、元々分野(行政学、政治経済学)が専攻だったんですよね。ビジネスよりもこの分野の方が個人的には好きです。

  5. SWさん、ありがとうございます。
    なるほど確かに、新薬認可の基準は、安全性とのトレードオフという側面、ありますね。
    元々、規制は、多少の経済効率を犠牲にしても安全性や公共性をより重視するという側面があると思うので、イノベーションにはネガティブに働きやすいというのは納得です。
    他の産業と比較してみたいですね(まぁ追々…)。
    #読み手を意識して内容をコントロールするなんてさすが。
     私は自分の興味の赴くままなので、今後もきっと暴走特急です(笑)

SW へ返信するコメントをキャンセル

死んでしまったら私のことなんか誰も話さないをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む