前回、何のコメントもせずにイキナリ紹介したIDCのデータ(グローバルIT市場では、サービスが4割、パッケージソフトウェアが2割)だが、私はこれを見た時、パッケージソフトウェアの市場規模ってこんなに大きいのか!と意外に感じた。
これまでハッキリ書いたことがなかったが、ソフトウェア業界について私は幾つか仮説を持っている。
- 実はパッケージソフトウェアによってカバーされている領域はまだまだ限定的で、企業が使っているソフトウェアの多くはカスタムメイド(システムインテグレーションサービス)に依存しているのではないか。
- そして、パッケージソフトウェアの市場というのは、「以前はカスタムメイドだったものの標準化・テンプレート化」の繰り返しによって成長してきたのではないか。
- 今後も、パッケージソフトウェアは増加するだろうが、カスタムメイドの領域はなくならない。なぜならば、パッケージソフトウェアを使うということは、(厳密には違うのだが、極端に言い切ってしまえば)「他社と同じプロセス」ということだから。企業には必ず固有・独自のプロセスがあり、それが差別化・競争力の源泉のはず。
- 但し、逆に言えば、「今は単に標準化できるかどうかが分かっていないが故にみんなバラバラに作っているが、実は標準化できる領域」「企業固有のプロセスで、自分のコアコンピタンスだ、と思っている領域も、実はそんなに特別ではなくて標準化しても問題ない領域」というのも、まだまだ残っているのではないか。
ソフトウェアでベンチャー企業というと、みんな昨今はGoogleのような、広く世間一般の人に使ってもらえるものを想像するが、マイケル・クスマノ「ソフトウエア企業の競争戦略」では、ベンチャー企業へのアドバイスとして、企業向け(特定業界・特定業務の)パッケージソフトウェアを、サービスと組み合わせて売って行くのが現実解だろう、と結論付けている。(※この本の私のレビューはこちら)
Software Magazineの"Software 500"(クスマノも本に参考資料として載せていた)を眺めると、幾つか興味深いことに気づいた。(そのうち気が向けばグラフを載せますが、気になる方はソースを見てみてください。会員登録すれば無料で見れます。表形式なので英語もそんなにないし)
- ソフトウェア業界も、おそらくものすごいロングテールである。企業全体の売上高で見るとIBMとhpだけが突出して大きく、3位のMicrosoftの2倍以上になる。また、ソフトウェア+サービスの売上高に限ると、2位のMicrosoftは1位のIBM(注:IBMはグローバルサービスの売上高が大きいため、純粋にパッケージソフトだけではない)の半分の規模で、3位のOracle及び僅差で4位のSAPは、2位のMicrosoftの1/3。それから、ソフトウェア+サービスの売上高が$10 billionを超えているのは上位7社のみ。その後は、32位で$1 billion台($2 billion以下)まで下がり、60位以下は$1 billion未満。91位以下は$500 million未満(※1)
- パッケージソフトウェア主体の会社よりも、コンサルティング・システムインテグレーション主体の会社のほうが多そうだ。上位50社でパッケージソフトウェアを売っている会社は16社程度(※2)だった。Microsoft(2位、$33b)、Oracle(7位、$10b)、SAP(9位、 $9.3b)、Sungard Data Systems, Inc(24位、$3.5b)、Avaya(25位、$3.5b)、Google(29位、$3.2b)Symantec(32位、$1.9b)、Amdoc(33位、$1.8b)、Intuit(35位, $1.7b)、Adobe(37位, $1.7b)、SAS(39位, $1.5b)、Siebel(42位, $1.3b)、Compuware(43位、$1.3b)、The Sage Group PLC(46位, $1.2b)、Acxiom(48位, $1.2b)、Novel(50位, $1.2b)
- パッケージソフトウェアの大半は、大企業がターゲット顧客である。逆に、個人向け・中小企業向けがある程度の割合に達していると思われるのは、Microsoft、Google、Symantec、Intuit、Adobeぐらいだろうか。それ以外の会社は、最近は中小企業向けを謳っているところもあるが、実体はどうかは分からない。
これを見ると、クスマノが「コンシューマー向けの事業は難しい」というのも激しく肯ける。だからこそ、成功した時の見返りが大きいのだが。(※3)
そんなわけで、仮説1については、このランキングを見た限りでは、大体合っているように思う。仮説2については、以前、パッケージソフトウェア業界(主にOracle)で多少触れたが、特に企業向けの業務アプリケーションの分野では、あるパッケージベンダで働いている人がスピンアウトするパターンが多いことから、起業のパターンとして、「従来製品では対応できておらず、かつ多数の顧客にある程度共通している課題を見つけ、そこをカバーする新しい製品を売り出す」という構図が想像できるので、これもそんなに大きくずれてはいないように(勝手に)思っている。
残るは仮説3だが、これは、正直、2年以上前から気になってるけどまだ全然手が付いていないなぁ。。。。と思うので、追求の仕方はちょっと考えよう。
繰り返しになるが、全てをパッケージ化するのは無理だろうが、パッケージ化できる領域はまだたくさん残されているし、カスタムメイドのソフトウェアもパッケージも、今後もっと増えて行くだろう、と私は思っている。そもそも、世界には、まだコンピューター化されていない分野・コンピューターを使っていない人のほうが多いのだから。(これはクスマノの結論でもあるが。)
(※1)Software 500というランキング自体の限界だが、アメリカ以外をベースとしている会社に関しては相当漏れ・抜けがあると思われる。おそらくアメリカの公開企業を対象に調べており、当然ソースは英語で書かれているものだけと想像できるので、日本でしか上場していない会社や、日本の非公開企業などはこのリストに含まれていないと思われる。いわんやアジア諸国をや。しかも、500位近くまで行くと売上高は$0.5 million程度なのである。$1 millionはザックリ1億円、ってことは、ソフトウェアで億稼げるのは世界でたった500社未満ということになってしまうが、幾らなんでもそれは少なすぎる。なので、リストの上位の方はそれなりに信頼性はあると思うが、きちんとこの業界を検証するにはもう少し網羅的なデータが必要だろう。しかし、いずれにせよ、ソフトウェア業界がいかに上位寡占になりがちか、ということや、IPOにこぎつけるのがいかに難しいかということを示す一つの材料としては十分面白いと思う。
(※2)私個人が「あそこはパッケージソフトウェアの会社」と認識しているもの、プラス、Software 500のSoftware Business Sectorの欄を見て、パッケージソフトウェアっぽかったらWebサイトを確認し、ぱっと見でパッケージソフトウェア主体っぽかったら良しと判断した。というわけで、あくまで個人的な主観なので、漏れ・抜け・認識違いはあるかもしれません。Googleについては、「標準化・テンプレート化されたソフトウェアをサービスとして提供している」と思うので「パッケージの会社」に含めるか悩んだのですが、ここでのポイントは、「カスタムメイドで顧客のニーズに応じて一から構築する」のか「既に出来合いのモノを提供する」のかなので、入れました。
(※3)私の父親は、パソコンやインターネットとは全く無縁の人間で、携帯メールすら使わないし、「ブログみたいなものを書いて一体何の役に立つのか、俺には理解できない。」と言うが、「そりゃあ、Microsoftみたいに誰でも使えるようなものを作れば、一発当てれば大きいかもしれない。でも、成功する会社はものすごく少ないだろう。その点、企業向けにソフトウェアを作る事業は、保守運用等もあって確実に長期的にお金が落ちてくるから、大当たりはしないかもしれないが手堅い」と昔から言っている。そう思うと、具体的に何社が成功できるのか・成功しそうか(成功確率)、幾らぐらい儲かるものなのか、といったディティールを除けば、商売の基本は普遍のルールなのかもしれない。ちなみに私の父は元零細企業の社長である。だからと言って、Googleを目指すことが悪いとは思わない。挑戦しなければ可能性はゼロだが、ベンチャーが成功する可能性はゼロじゃないんだから。
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